今月のちょっといい話
スマートな心遣い
知人にご馳走をしてお礼を言われた時、どういたしまして、というのは少し他人行儀だし、気にすんなよ。
というのもちょっとかっこつけている気がしますよね。
お笑い芸人の石井正則さんがまだあまり売れていない頃のことです。
仲間と飲んでいるとその店に偶然、番組スタッフと一緒にビートたけしさんがやってきました。
石井さんにとっては雲の上の人との偶然の出会いです。
緊張しながらも、お笑い芸人の石井と申します。
とかしこまって挨拶をしました。
対するたけしさんは「あー」という感じで、会話らしい会話をすることもなく石井さん達は席に戻ます。
その後しばらくするとたけしさんは店を出て行ったのでした。
その直後に店を出ようと石井さん達がお勘定をしようとすると、店員から驚きの言葉を聞きます。
お代はたけしさんから頂いています。
驚き大慌てで靴も履かずに店の外へ飛び出すと、たけしさんの後ろ姿に向かって大声で叫びました。
「ありがとうございました」
この時、振り返るとたけしさんがちょっと照れた顔で口元に笑いを浮かべながら「売れたら使ってね」と言いました。
「もレスターになったら俺が落ち目になっていても共演者で使ってね」という意味です。
相手がどんなに下の立場でも侮ってはいけません。
役職なんて、人間的な価値とは関係ありません。
相手の肩書きによって態度を変えることなく、誰に対しても等しく丁寧に接する人が本物です。
ちなみにたけしさんが後輩が同じ店にいたら、先に出て奢ると決めたのは渡哲也さんから聞かされていたからなのだとか。
石原裕次郎さんも実践していたのだそうです。